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(私は結婚前鉄鋼メーカーに勤めていたのだけれど、)入社して最初に教育されるのが「安全」だ。「安全」は、「生産コスト」や「品質」よりなによりもまず第一に優先されるべきであると、徹底的に教え込まれる。事故には至らなくても、危なかったという場面…

信号待ちの時何気なく前の車を見やると、赤ちゃんが乗っているのに気づいた。かわいらしい顔をこちらに向けて、リアシートの背もたれをよじ登ろうとしている。目が合うと歯のない口を開けてにっこり笑う。よだれにぬれた唇がつやつやしている。ヘッドレスト…

職場に、一人、困ったちゃんがいる。いつも身勝手な行動をして、周りをてんてこ舞いさせている人だ。今回のトラブルはそのAさんが突然ある学会(海外)に参加すると表明したことから始まる。その学会は、誰も知らない、申し込みさえすれば全員口頭発表できる…

ボスのアメリカ留学時代の恩師夫妻が世界旅行の途中に日本に立ち寄るというので、ボスがそのホスト役を務めた。観光1日目には大阪城を、2日目には金閣に連れて行ったのだという。その時彼らはしきりに、日本の歴史的建造物は、understatementだと言ってい…

とある企業のある人(仮にAさんとしよう。女性、私と同年輩か?)と、仕事上のやりとりをした。ボスがその企業に提出した書類のうち、どうしても必要なのに届いていないものがある、ということで、私が連絡を受けたのだ。ボスは、研究のアイディアやリーダ…

寝言

夫は時々、寝言を言う。遅くまで本を読んでいたりすると、夫の寝言を耳にすることがある。何を言っているのかはわからない。けれど感じはでているので、テープに録音して本人に聞かせたら、夢の内容と照らし合わせて自分が何を言ったのか思い出せるかもしれ…

兄の別居と父

結婚して京都に住む兄が別居中だという。その報せは両親が神戸にやってきた日に私にもたらされた。兄は無口で穏和。兄嫁はちゃきちゃきの浪速ッ娘。どこにでもいる似合いの夫婦だ。しかし、別居の報せを聞いた時、私たちは別段驚きはしなかった。そうなって…

夜のスーパーマーケット

お財布の中身がスッカラカンだったのを思い出して、晩ご飯のあと、近所の商店街へ行った。わずかの現金をおろして、パンを買いにスーパーに寄る。夜7時のスーパーは、夕方とは違った表情を見せる。小さな子どもを連れたお母さんは少なく、仕事帰りと思われ…

がんばれ、受験生!

センター入試の2日前のこと。大学の事務棟を出たところで、男の子に声を掛けられた。ジーパンにダッフルコート。毛糸のマフラーを巻いて、アウトドア用のディパックを背負っている。「あの、すみません。○学部の試験会場はここでしょうか?」事務棟の向かい…

相性とか好き嫌いとか

Aさん(女性、50歳代)とBさん(男性、60歳代)は仕事のペアなんだけど、うまくいっていない。Aさん、Bさんそれぞれは、とってもいい人。みんなからも好かれている。それなのに、AさんとBさんの間は、ギクシャクしているのだ。で、女性陣で集まってお昼を食…

悪口を、言うこと、聞くこと

「人の悪口を言ってはいけません」と、小さい頃から教えられる。だから、悪口をいうことに罪悪感が伴ってしまう。それでもつい口が滑ってしまうと、あとでひどい自己嫌悪に陥ったりもする。だけど、悪口を言うことがそんなに悪いことだろうか? 意地悪された…

希望行きのバス

帰りのバス。全員降りて、一人になった。それでも律儀に「次は○○です。○○においでになるにはここが便利です」とアナウンスが流れる。誰も待っていないバス停にいちいち停車し、乗降口のドアが開く。息継ぎするようにしばらく停まって、誰も乗ってこないのを…

他人まかせ

職場の忘年会でカクテルを頼むことになった。 酔っぱらっていたのと、お酒だったらなんでもいいという輩が多かったので、全員、何を注文するかに無関心だった。誰かが、 「あ、オレ、ミントジュレップ」 と注文したら、案の定、「なんかわからんけど、それで…

祖母に会いたくて

祖母のことをいろいろ思いだした。たくさんの愛情を注いでもらったのに、なにも返してあげることができなかったと、今更ながら自分の薄情さが悔やまれる。病室にはいる時、母は 「泣いたらいけんよ」 と言った。でもやっぱり涙が止まらなかった。 母には予感…

愉快な酔っ払い

夜遅く目が覚めた。新しい日付に変わって2時間ちょっと経っていた。隣の布団に夫はいない。ふすまの隙間からキッチンの明かりがもれている。では家には帰っているのだな。耳をすましてみる。何も物音がしない。向こうの部屋で寝込んでしまったに違いない。そ…

女性の煙草

女性が煙草を吸っている姿が好きだ。なぜ女性の煙草が好きなのか。それは祖母の影響だ。大好きだった祖母。もの静かに煙草を吸っていた。ゆっくりと、根元まで。お正月に親戚中が集まってワイワイやっていても、煙草を吸いながらみんなの話に耳をかたむけて…

本当に手に入れたいもの

日曜日の夕方、夕餉の買い物客でにぎわうスーパーでの出来事だった。耳をつんざく泣き声に思わず振り返った。幼い女の子が泣いている。買ってもらおうと選んだお菓子を、父親に取り上げられたのだ。女の子はますます激しく泣き続け、とうとう周りに人だかり…

灯りに誘われて

仕事帰りに車を車検に出した。ので、家まで電車と徒歩で帰る。電車を降りてから家までの道のりは、前半が商店街、後半が住宅地である。すでにあたりは真っ暗。通りの店々からこぼれてくる光がまぶしい。昭和30年代にタイムスリップしたかのようなこの商店街…

我が家の危機

家に帰ってすぐに夫に送信したメール。 - あのね、今日、お米が一粒もないの。で、帰りにコンビニで2kgだけでも買おうと思って寄ったら、なんと財布をロッカーに忘れてきてたの!まあちゃんの分はあるし、私も冷凍のうどんがあるので、それを食べようと思…

おかしなメニュウ

今夜の我が家のメニュウは、○アンコウ鍋 ○ステーキ、クレソン ○551のシウマイどう考えても、おかしな組み合わせだ。だが、こうなったのには訳がある。今夜はもともとステーキの予定だった。スーパーのチラシを見た時から、決めていたのだ。「本日の特売品…

月の光

昨日のこと。仕事を終えて帰ろうと身支度している時、話しかけてきた人がいた。同じ教室の人だ。ふたことみことの会話だったけど、とても不愉快になった。職場の駐車場に向かいながら、会話を反芻した。だんだん腹が立ってきた。ああ言えばよかった、こう言…

不意に思い出したこと

なぜ、急に思い出したのかわからない。ただ、その時の風景が急に蘇ってきたのだ。◆幼い頃、妹はいつも兄のあとを追いかけていた。兄は自分の友だちと思う存分遊びたいのに、金魚のフンのようにいつも妹が付いてきた。兄はそんな妹がうっとおしかった。ある日…

京都と車

京都へは車で行くことが多い。このごろ、「パーク&ライド」−−−車を駐車場に止めて、寺社めぐりの移動には電車やバスを利用する、というやり方が提唱されている。我が家でもさっそくそれを実行してみた。今回は出町柳の駐車場を利用した。ここは1時間300…

夫の工夫

夜、家を空けると、夫は機嫌が悪い。それがたとえ職場の行事でもだ。ここのところ2週連続で、2回夜に出かけている。その2回とも夫は寝ずに私の帰りを待っていた。昨夜の歓送迎会は、3週連続3回目の夜のお出かけだ。だから歓送迎会の間じゅう、何時に家…

こういう歓送迎会もある

歓送迎会。「送」の対象者が一人いた。そのA氏がなぜこんな中途半端な時期に退職するのか、本当の理由を知っている。出席者のごく一部が、その経緯を知っている。ボスは、A氏は来週から新しい職場に行くことになっていると紹介した。そして、これからも頑…

仕事帰りのコンビニにて

明日の朝食用のパンが切れていたので、仕事帰りにコンビニに寄る。コンビニは主婦にとっても便利な店である。今日のように、パンだけ、とか、牛乳が切れてる、なんて時は、わざわざスーパーに寄らなくてもコンビニで用が足りる。帰り道に何店舗かあるので、…

『暮しの手帖』

『暮しの手帖 300号 記念特別号』を買った。『暮しの手帖』は、母の愛読書だった。ほとんど雑誌というものを買わなかった母が、この本だけは買い求め、大切に読んでいた。そのせいか、中学生の頃から、「すてきなあなたへ」や「家庭学校」を楽しんで読んだ。…

社長の涙

NHKの「人間ドキュメント」を見る。5年前倒産した証券会社の社長の、その後のドキュメントである。「社員は悪くありませんから」と言った社長の言葉によって、たくさんの元社員が救われたと言っていた。あの涙には、賛否両論あった。でも、あの心から発…

ぎっくり腰3

「のど元過ぎれば熱さ忘れる」とは、夫のことを言うのだとつくづく思う。それでも、歩く速さが日に日に速くなっていくので、明るい気持ちでいられる。

ぎっくり腰2

医者に行った甲斐あって、夫の腰の痛みは随分よくなった。もう一日会社を休む予定にしていたが、出勤するという。言い出したら聞かない質なので、用事を済ませたら帰宅するという約束をして送り出す。会社に出勤すると、夫のぎっくり腰はすっかり知れ渡って…