祖母に会いたくて

祖母のことをいろいろ思いだした。たくさんの愛情を注いでもらったのに、なにも返してあげることができなかったと、今更ながら自分の薄情さが悔やまれる。

病室にはいる時、母は
「泣いたらいけんよ」
と言った。でもやっぱり涙が止まらなかった。
母には予感があったのだろう。帰省して数日後に祖母は亡くなった。

祖母はふくよかで、いつも包み込みこんでくれるようなやさしさがあった。だからベッドの上の小ささが意外な気がした。最後の日、祖母は発熱した。私はずっと祖母の手を握っていた。その手が時々ぎゅっとにぎりしめられた。頭の痛みに耐えていたのだろうか? それとも何かを伝えようとしてくれたのだろうか? その手の感触が今もよみがえる。

夢の中では時々祖母に会える。いつも静かにほほえんでいる。そんな朝は少し目がぬれる。

祖母のお墓参りに行くのが、ずっと嫌だった。でも今、なぜか無性にお墓参りに行きたくなった。港を見下ろす山の斜面に、祖母の墓はある。そこに行けば祖母に会えるだろうか? 会えないことはわかっている。でもお墓に行ったら少し祖母に近づける気がする。なぜだかわからないけれど、不意にそんな気持ちになった。