17.「よろづの物くもりなく」

「よろづの物くもりなく白き御前に、・・(略)・・、よき墨絵に髪どもをおほしたるやうに見ゆすべてのものが白一色という(中宮様の)御前にあって・・・(女房たちは)すばらしい墨絵の人物に黒髪を描いたように見える」。白一色のしつらい、装束の中の、黒々とした長い髪。白と黒のコントラストが目に浮かぶようではないか! このあと、御湯殿の儀に奉仕した女房たちの装束について細々と記される。年格好の同じくらいの人がお互いの扇を見比べているのを見て、「人の心の思ひおくれぬ気色ぞ、あらはに見えける互いに他に劣るまいと思っている女房たちの気持ちがはっきり見えるのであった」というあたり、いつの時代もそういうのってあるよなあ、と思う。それをじっと観察している紫式部もなかなか鋭い。あら、あなたのはエルメス? 私のはグッチよってな感じで火花が散っていたのかもしれない。