8.「九日、菊の綿を」

この段は、なかなか意味深である。重陽節供の当日、道長の奥様が紫式部に「菊の綿(菊の花に綿をのせたもの)」を贈る。紫式部は返礼の歌を用意しておいたのに、奥様がさっさと帰っていったので、渡せなかった、という。<解説>には、「菊の綿を贈るのは、目をかけている侍女に対する、格別の親愛の情の表示」と書いてあるけど、なんかしっくりこない。プレゼントを渡しておいてお礼の言葉を聞こうともせずさっさと帰るかなあ? お礼の歌を渡しそびれたとしても、そのことを当てつけがましく書き残したりするかなあ? うーむ、腑に落ちない。そこで朴おじさんの見解を聞いてみよう!

道長の奥さんが菊の綿を贈ったのには、実は「年齢をわきまえて他人の夫に手を出すのはおやめなさい」という意味があるのじゃよ。カチンときた紫式部は負けじと「あなただって、殿より2歳も年上じゃない! 私は殿より8歳も若いのよ!」という歌を作って対抗しようとしたんじゃ。じゃがの、奥さんがさっさと帰っていったんで、火花を散らしかけた女の戦いは不発に終わったんじゃよ。

うーむ、なるほど。朴おじさんの意見は、王朝人とて普通の心を持った人間だ、ってこと感じさせてくれて、好きだ。