ゴミ捨ての悩み

Kさんの悩みの一つは、相棒がゴミをすぐに捨てに行かない、ということだ。Kさんの教室は、ほかの教室のたくさんの先生がたが出入りするので、いつ誰が来てもきれいに見えるようにしておきたいのだそうだ。だから、ゴミ箱のビニール袋を取り替えたら、たまったゴミはすぐに集積所に持って行ってほしいとKさんは言う。

実際Kさんはきちんとした方で、教室はいつも整然としていて気持ちがいい。その清潔さはKさんの気遣いがあって保たれているのだろう。

Kさんの相棒は、新卒の女の子、Sさんだ。もちろんKさんは、ゴミはすぐ集積場に持っていくようにSさんを教育した。ところがその甲斐なく、Sさんは何かのついでがある時にしかゴミを集積所まで運ばない。だからゴミはしばらくは教室内に保管されることになる。その間じゅうKさんのイライラは続く。しびれを切らすとKさん自身が運ぶことになる。そういう毎日がKさんは「たまらない」という。

その気持ちはよくわかる。よくわかるけれど、あえて言わせてもらおう。

Sさんはゴミ捨てをサボっているのではない。すぐにではないにせよ、自分の都合のよいときにちゃんと捨てに行っているのだ。それなのに、なぜそれが受け入れられないんだろう。この世の中、すべての人がKさんのようにきれい好きできちんとした人ばかりではない。そういう簡単なことがどうしてわからないのだろう。

それにこの場合、イライラがつのる前に自分でいさぎよくゴミを捨てに行か、今のSさんを受け入れるか、仕事と割り切ってSさんに注意するしかないだろう。

さらに言わせてもらうなら、Kさんにもう少し「まあいいや」という気持ちがあったらそれほどいらいらせずにすむのに、とも思う。
「まあ、自分が捨てに行けばいいや」
「まあ、しばらく隠しておけばいいや」
「まあ、小うるさい人だと思われてもいいや」
というように。

とは言え、こういう小さいことが気に障るKさんの気持ちはよくわかる。誰にだって絶対に譲れないラインはあるものだ。Kさんにとって教室をきれいに保つことはとても大切なのだ。

また、ゴミ捨てのことはあくまでも一例であって、そのバックボーンにはSさんに対する大きな不信感があるのは言うまでもない。

Kさんに「こうしたらいいんじゃない?」というのは簡単だ。だけど、その根が不信感である以上Kさんの悩みが解消するとは思えない。だから、人間関係は難しいとつくづく思う。