金沢にて

「そういえば、金沢大学を受験したんだった」

金沢の街を歩きながら思い出したように夫が言う。そのころ金沢大学は金沢城跡にあったんだと。それにあこがれて受験したらしい。なんという不純な動機。ミーハーなヤツ。

金沢の街を歩いていて思ったのは、国の繁栄は首長の手腕に負う部分が大きいということだ。北陸にあって江戸や京都に勝るとも劣らない文化が栄えたのには、歴代藩主の手腕によると言っても過言ではあるまい。

「結局、利家はクリーンなんだよな。だから天下を取れなかったんだ」とは夫の弁。「信長も秀吉も家康もダーティーなこといっぱいして天下を取ったんだ。それができなきゃ、天下は取れないんだよな」と言う。

天下を取ることが目標なのも悪くはない。でも前田家の存続を守り加賀に繁栄をもたらしたその生き方だってなかなかのものだと思う。