命名
2匹に名前が付いた。
きみどり → 「すだち」
き → 「ゆず」 by 娘。
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すだち、は、新しいゲージにすぐに慣れた。今ではゲージのあちこち縦横無尽に移動できるようになった。甘えん坊で、とにかく誰かにかまって欲しいらしい。人間が近づくと扉のところにへばり付いてすがるような目つきでじっとこちらを見つめるのには参ってしまう。
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心配なのは、ゆず、である。足が180度横に開いているのだ。常時お腹が床についていて、移動は嘴とわずかに床にふれる足とで、ずりずり這っている。止まり木にはどう見ても止まれそうにない。夫があちこちのサイトを調べてみると、「腱はずれ」という症状のようだった。
ダメとは思いつつもわずかの可能性にかけて獣医さんに見てもらうことにする。幸い近所には、は虫類から魚類まで何でも診てくれる先生(エチオピア人なのだ)がいるのだ。
診察室にはいると先生はひと目みただけで、これは奇形だから治らない、矯正方法はあるけれど、効果が期待できないし、逆にストレスで死んでしまうかもしれない、と言った。また、お腹をすってしまうとそこに傷が付いて感染症で死んでしまうので、ハンモックのようなものを作ってつり下げて育てるのがいいとアドバイスしてくれた。そして、夫の目をじっと見据えてこう言った。
「あなた、なんとか工夫できますか?」
さらに、
「この子を育てるのは難しいですよ」
と付け加えた。
そのきっぱりとした口調に、ゆずは立派に育ててみせる、そう心が決まった。身が引き締まった。
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家に帰って、さっそくミニ・ハンモックを作って、ゆずをぶら下げてみた。口の位置にえさが来るように、調節もしてみた。しばらくするとゆずは、その中で気持ちよさそうに眠り始めた。その姿を見たとき、何とも言えない感情が胸に迫った。ゆずは一生この中で生きるのか?飛ぶこともできずに、自由に動くこともできずに、ただ餌を食べるだけで毎日を過ごすのか?それでこの子は幸せなのか?
答えはNoだ。
しばらくするとゆずはハンモックからずり落ちて、逆さ吊りになってしまった。こうなると、自分の力では元の位置に戻れない。ましてや、誰もいないときにこの状態になったら助けてやることができない。逆さ吊りになったゆずをみた瞬間、私たちの心は決まった。ゆずを他のインコたちと同じように育てよう。そして、鳥かごの中で暮らしていけるように、工夫してやろう。そう決心したとき、あらためて、
「あなた、工夫ができますか?」
と言った、先生の顔が思い浮かんだ。