自分も通ってきた道

他人の仕事の進め方には、口を出さないことにしている。のだけれど、先日若い人が少々危なっかしいやりかたをしていたので、やんわりとアドバイスしたことがあった。かつて自分も犯した失敗を繰り返させたくなかったし、もしミスがあれば対外的なイメージが悪くなるタイプの仕事だったので、やむを得ず口出ししたのだった。ほんとうはそんなことしたくなかったけれど。

若い人には若い人の考えなり自信があるのだろう。案の定、私のアドバイスは受け入れられなかった。そして、案の定、今日になってミスが発覚したのであった。でも、こういう時、絶対に「だからあの時注意したのに…」とは言ってはいけないのだ。ミスを気にする若い人に、「大丈夫よ、頭を下げるのはボスの仕事なんだから」とさりげなく言う。

ふり返って我が身。これまでどのくらい先輩諸氏に砂を噛む思いをさせてきただろう。自分は仕事ができると思っていた。なんでも完璧にこなせると思っていた。自分のやり方が一番能率的で確実だと思っていた。そのくせ、何度も失敗をしでかし、周りに迷惑をかけ、上司に頭を下げさせてきたのはこの私だ。順送りとはよく言ったものだ。そのころのしっぺ返しを今受けている。

時すでに遅しの感があるけれど、この歳になってようやく、年長者の言うことには一理あるということがしみじみわかるようになってきた。遠回りのように思えても、その回り道にいろんな意味が込められているのだ。そのようなアドバイスは時にうっとおしいこともあるけれど、まずはその言葉を受け止め寄り道してみよう、改めてそう思ったことであった。