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土曜日の昼下がり、気持ちよくお昼寝から目覚めると、どこからともなく、
「ぴゅるる、ぴゅるる」
とかすかに聞こえてくる。空耳だろうか、本当に聞こえているのだろうか。しっかり聞こうとして耳を澄ますと、何も聞こえない。なんだ気のせいかと、またうっとりとまどろむ。
ところが、しばらくするとまた、
「ぴゅるる、ぴゅるる」
と聞こえてくる。気のせいじゃない。確かに聞こえるのだ。胸が高鳴る。気持ちがはやる。息を殺して耳を澄ます。
「ぴゅるる、ぴゅるる」
間違いない、ヒナが生まれたのだ。
夕方、外出していた夫が帰宅。さっそく夫に報告する。静かにしていると、はっきりと「ぴゅるる、ぴゅるる」が聞こえる。夫もにわかに興奮。そーっと巣箱の扉を開けてみる。すると、赤いグミみたいなのが、もごもご動いている。あれだ。あれがヒナだ。ほんとうにちっちゃなちっちゃな命。懸命に手足を動かしている。あーちゃんときーちゃんの赤ちゃんが、確かに誕生したのだ。娘も呼んで一緒にヒナを見る。
我が家では娘以来の新しい命の誕生だ。なんてすばらしいのだろう。誰の手も借りずに立派にパパとママになったあーちゃんときーちゃん。よくやってくれた、ありがとう、と言いたくなったひとときである。