数日前のこと。財布のお金がなくなったので、ATMでおろそうとすると、カードがない。あわてた。

家に帰って別のバックや、引き出しを探す。どこを探してもない。きっとどこかで落としたのだ。あきらめて銀行に電話をかける。すると落としたはずのカードがその支店に届いているという。なんという強運だろう。きっと私の日頃の行いがよいのだろう。

気をよくして受け取りに行きたいと言うと、ご本人さまに来店いただきたいという。どうやらそれが規則のようだった。

落としたカードは夫の名義で、夫が働いて得た尊いお金がその口座に振り込まれる。我が家はそのお金で生活しているのだ。その大事な大事なカードを落とした挙げ句、取りに行って欲しいなどとどの面下げて夫に言えようか。だいたい銀行の営業時間は夫の勤務時間なのだ。休日に買い物につきあってもらうのとはわけが違う。

焦った。ここはなんとしても、落とした私が、自分の手で取り返さねばならない。「もう一度聞きますが、私じゃダメなんですか?」なおも食い下がると、少しお待ちください、と言われた後、あっけなく妻の私でもOKだという。なんだ、最初からそう言ってよ、と腹が立ったけど、文句を言える筋合いではないので我慢した。

ようやく、平日の昼間に時間が取れた。簡単な手続きであっけなくカードを取り戻すことができた。拍子抜けした。

それにしても、落としたキャッシュカードが悪用もされず無事手元に戻るなんて、なんて日本はすてきな国なんだろう。ちょっとだけ「日本」を見直した一瞬だった。