娘が登校したしばらくあとに、夫が赴任先に帰っていった。夫は普通に出勤するように家を出ていった。急に家が広くなった気がする。夫がこちらにいる間は、それが当たり前のように思えた。夫一人の部屋が向こうにあることなど、絵空事のように思えた。けれど、夫が今夜はあの部屋に帰っていくんだと思うと、やっぱり”タンシンフニン”は現実だったんだなあとぼんやり思う。静かになったキッチンでYとふたり、向かい合って朝食をとる。Yはりんご、私はトースト。Yはりんごをいつもよりはよく食べて、それに飽きるとトーストを欲しそうじっと見るので、ほんの小さなかけらをふるまった。Yはそのかけらをちまちまと、大切そうに囓って食べた。「ようちゃん、おいしい?」と聞くと、Yはとんちんかんなおしゃべりを一人で展開していた。この子がいてくれてほんとうによかったなと思った。

ケンブリッジ留学中のAドクター、一時帰国で顔を出してくれる。向こうでの生活のことをあれこれ聞く。とにかく物価が高いので大変だとしきりにこぼす。でも奥さんの実家が大富豪なので、誰にも真剣に取り合ってもらえていなかった。ケンブリッジで紅茶がどのように飲まれているか、現地レポートが面白かった。研究室の冷蔵庫を開けると、ずらりと牛乳が並んでいて、それは常に補充され、品切れになることがないのだそうだ。そしてイギリス人は、紅茶にこの牛乳とお砂糖たっぷり入れて飲むらしい。意外だったのだけれど、牛乳は冷たいままなんだそうである。生ぬるい紅茶を皆飲んでいるのかと思うと、なんだか面白かった。ティーポットで入れるヒトあり、ティーバッグでちゃっちゃと作るヒトあり、それは様々なんだそうである。

大学への交付金は今後約6割に削減の方向、それが時代の流れなのだろう。その分自分たちでがんばって競争的資金を獲得しなさいとな。対象者は全員科研費の申請をすることとのボスの指令をメールにて流す。加えて応募資格がない院生にもアイディアの提供を求める予定。研究費の申請は、研究者を目指す者はまずチャレンジすることが大切と思う。申請書を書くことは、研究計画の立案、自分の業績の把握に役立つだけでなく、どのような研究が望まれているのか、どのように書くと審査する人たちに理解してもらえるのか、またそのための情報収集など、いろいろなことを身につけることができるからだ。前の職場のボスは、「(どうしてもその研究がしたいという)ラブレターを書くような気持ちで」とよく言っていた。また、「半分現実、半分夢物語」、応募が少ない分野をねらって、とか。人それぞれの心構え、ポイントがあるようだ。

その他、Aドクターの対応やら、問い合わせへの対応などなどで、あっという間に午後の時間が過ぎていく。夕方より雨。